一旦、雇用契約を結んだ後であれば、安易に解雇を進めることは非常にリスクが高く無効になる可能性も十分にあり得ます。裁判例基準では、解雇が認められるのは、経歴詐称が特に重大である場合に限定されています。
経歴詐称の重大性と解雇の基準
経歴詐称が解雇の事由となるかどうかは、詐称の内容と程度、職種と採用時の状況に応じて判断されます。ここでいう「重大な経歴詐称」とは、もし真実が知られていたら採用しなかったか、異なる条件での採用を検討したであろうケースを指すと裁判例では判示しています。(神戸製鋼所事件大阪高判昭37.5.14)
経歴詐称の種類
一般的に、学歴、職歴、犯罪歴などの重要な情報の偽造は、重大な詐称に該当します。これらの詐称は、企業の採用判断に直接影響を与える可能性が高く、信頼関係を大きく損なう可能性があります。当然、「詐称の種類」も判断に影響するものです。
懲戒解雇事由としての詐称の評価
解雇を実施する際には、詐称が業務遂行にどのような影響を与えるかを考慮する必要があります。この点が最も重要な点です。
つまり「詐称によって業務内容に影響し得るか」という詐称の程度が「重大」である場合に、解雇の有効可能性が高まるものです。
逆に捉えれば、詐称の程度が軽微な内容で業務内容、業務遂行に影響を与えなければ、意図的な詐称が発覚したからと言って、直ちに解雇、つまり雇用契約の解消は許されるわけではないという判断基準を持つ必要があります。
参考裁判例
学校法人D学園事件(さいたま地判平29.4.)では、採用に関する書類提出時の重大な虚偽申告が即時解雇事由となる場合は、その虚偽が今後の雇用契約の継続を不可能にするほど信頼関係を破壊する場合に限られるとされました。
やはり、経歴詐称が懲戒解雇に至るほどの重大性を有するかを判断する際の基準として重要です。
実務上の対応とリスク管理
実務においては、話し合いによる合意退職を目指すことが望ましい場合もあります。
本人が認めていない、あるいは納得言っていない場合には、労働組合や訴訟移行へのリスクを考慮する必要があります。つまり、いくら詐称が発覚したからといって、一足飛びに解雇と判断するのではなく、やはり第一義的には当該社員との十分な対話が重要です。
当然、強制的または脅迫的な退職勧奨は避け、道義的な理由の有無も考慮する必要があります。
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