通常は、業務にかかわる部分については、出向先の就業規則が適用され、業務との関連性がない部分については、出向元の就業規則が適用されます。
社員を出向(在籍出向)させた場合、理屈の世界では、出向元にも出向先にも雇用関係が存在しており、二重で労働契約が成立しています。
一方、通常は、出向元と出向先で就業規則の内容が異なりますから、出向者は、出向元の就業規則、出向先の就業規則、どちらの就業規則を適用するのかという疑問が出てきますよね。
就業規則には、労働者の権利と義務が規定されておりますが、出向の場合は、出向元及び先の就業規則内容の全てが適用されるわけではなく、主に業務に関連する規定については、労務提供が行われている出向先の就業規則が適用され、主に業務に関連しない規定については、出向元の就業規則が適用されると考えます。
例えば、出向先の就業規則では、「遅刻を5回したら懲戒処分で減給」と規定されていたとします。しかし、出向元の就業規則では、「遅刻を3回したら懲戒処分で減給」と規定されており、実際に出向先で、遅刻3回したので、出向元の就業規則を適用して、減給した場合は、この懲戒処分は無効となるということです。
ですから、会社にとっての『いいとこ取り』はできないことになりますね。
ただし、就業規則の適用範囲の問題は、個別の事案を見ると、非常に難しい問題でもあるので、出向先と出向元で事前に協定し、出向社員に対しては、その出向内容や適用される労働条件を明示しておきましょう。