人事権を持った人が承諾していない場合には撤回は有効になる。
一般的な退職届の提出は、『合意退職の申し込み』と解釈できます。したがって、会社の承認があって初めて退職が成立します。
したがって、退職届が提出された後でも、会社が承認しない限り、「やっぱり辞めません」と言って退職届を撤回することができることになります。さらに、会社が承認した場合でも、そもそも承認をする権限がある者が行ったものかどうがか、問題になることがあります。ここでいう適正な承認者は、『労働契約の締結権限を持った人』です。一般的な中小企業であれば「代表取締役」にあたるでしょう。
退職届を承認していなかったり、しかるべき人の承認でなければ、当該社員の退職届の撤回は可能ということになります。
撤回を認めたくない場合には
一定の企業規模があり、単独で権限を付与されている人事部長等も認められることもありますが、いずれも、退職の承認者が上司であれば誰でもよいわけではなく、社員の能力や実績を評価できる立場にあり、単独で採用などの人事権を付与されている者である必要があります。(大隈鐵工所事件・最高裁S62.9.18)
したがって、従業員が50人程度の中小企業であれば、原則的に代表取締役が承認者となり、大企業になれば、採用権限も有している人事部長クラス以上の方が承認者として適任だと考えられます。
『退職届を承認した前か後か』そして、『承諾済みの場合は、誰が承諾したか』という問題です。すでに退職届を承諾済みであり、労働契約の締結権限を持っている人(主に代表取締役)が承諾をしていた場合は、社員は退職届を撤回することはできませんので、撤回されることがないようにするためには、速やかに承認し通知する体制を作っておく必要があります。