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一般的な経営者の感覚とは異なり、痴漢などの私生活の非行は不問に付すのが原則です。法律的な視点から考えると、これらの行為が業務と直接的に関連していない限り、解雇や懲戒処分を行うことは無効になる可能性があります。しかし、企業の評判や信用に影響を及ぼす行為として、懲戒処分が実施されることも珍しくありませんし、一面ではその検討必要性もあり得ます。

懲戒処分の決定要因

特定社会保険労務士 脇 淳一懲戒処分を検討する際、企業は行為の重大性、被害者の年齢、加害者の勤務態度や反省の度合いなどを総合的に評価する必要があります。特に、女性が多くを占める職場の場合は、配置転換などの措置も検討していくことになります。

ただし、前述の通り、社員の私生活上の非行を不問が法的側面の基本です。会社と社員は労働契約でつながっており、所定労働時間外や会社施設外、すなわち私生活は本来自由であり、会社にとやかく言われる根拠が存在しないのです。よって、私生活上の非行は原則として「不問に付す」ということを押さえてください

その上で非行、つまり当該痴漢行為により

  • 事業活動に直接関連する場合
  • 企業の利益を害する場合
  • 社会的評価を毀損する場合

には、企業秩序違反と見なされ、懲戒の対象になり得ます。

この類型が社会一般や経営者の感覚と法律(裁判所)の考え方と最もずれるものといえます。

業種による特別事情の考慮

設問のように、社員が痴漢で捕まったことだけをもって、懲戒処分の対象とし得ません。

これに対し、電鉄会社の社員やタクシー会社の運転手、警備会社の警備担当等、業種·業態等に鑑みて、当該企業の社会的信用を直接毀損するという特別な事情があれば、懲戒処分の対象とし得ます

退職前提か復職前提か

理論的な側面とは別に、企業判断によって退職してもらいたいのか、復職を許容するかは、やはり個別事情に寄ります。退職前提であれば、本人と話し合う機会を何とか作り、本人の意向や会社の考えを伝える事も現実的な選択肢です。

解雇が容認されるハードルを検証の前に、現実を踏まえて今後について、話し合う事も重要と言えます。ただし、強要あるいは脅迫的なのは論外ですし、より大事なのは「道義的理由の有無」も必要と言えます。退職勧奨を行えば、辞めてもらいたい意思が伝わりますし、結論はどうあれ、受けた側のモチベーション回復は難しくなります。

復職方針の場合、ここで意識すべきは「周囲の目」です。経営陣が許しても、組織が許さない場合もあります。本人も居場所がありません。一定の禊を経て、こ本人同意の上で敢えて公表し、戻りやすい環境を作ることもあります。この方針ならば、現実的にトラブルリスクは少ないと考えます。

事実認定と普通解雇の可能性

逮捕や拘留により長期的な欠勤が予想される場合、痴漢行為自体を解雇理由とするのではなく、仕事ができない状況を理由に普通解雇が行われる可能性があります。退職を前提とするならば、こちらの方が理があると言えます。

冤罪の可能性と慎重な対応

痴漢事件には冤罪や誤解の可能性もあります。企業は従業員本人との対話を通じて、事実関係や反省の度合いを確認し、慎重に対応することが重要です

即座に解雇を決定するのではなく、総合的な判断を下すことで、他の社員の信頼を保ち、適切な対応を図ることが望ましいです。

裁判例からの視点

裁判例を参照すると、貨物運送業に従事する運転手が酒気帯び運転で行政処分と罰金刑を受けた事例があります。この事例では、従業員が職場外で行った行為でも、それが企業秩序に直接関連していれば、規則の適用対象となる可能性があることが示されています。また、企業が社会において活動する上で、その社会的評価が低下したり、毀損する恐れがある場合、職場外の行為であっても、企業秩序の維持のために規制することが認められるという例があります。この例では、懲戒解雇が有効と判断されました。2つの事例に触れていきます。

ヤマト運輸事件(東京地判平19.8.27)では、「従業員の職場外でされた行為であっても、企業秩序に直接の関連を有するのであれば、規則の対象となり得ることは明らかであるし、また、企業は社会において活動する上で、その社会的評価の低下毀損は、企業の円滑な運営に支障をきたすおそれが強いので、その評価の低下毁損につながるおそれがあると客観的に認められる行為については、職場外でされたものであっても、なお広く企業秩序の維持確保のために、これを規制の対象とすることが許される場合もあるといえる。」として、懲戒解雇を有効と判断しました。

この事例は、企業が従業員の職場外行為に対してどのような対応を取るべきかについての考え方に影響を与えており、企業の運営において従業員の行動が及ぼす影響を考慮する上で重要な参考になります。

運送事業に従事する従業員が就業時間外に酒気帯び運転(道路交通法違反)で逮捕された事例において、裁判所は懲戒解雇の妥当性を認めました。裁判所は、飲酒運転が社会的に厳しく非難されている状況を踏まえ、企業が従業員に対して飲酒運転を厳しく禁じることは、企業の名誉や信用、社会的評価を保持する上で必要かつ適切であると判断しました。特に、被告企業が国内最大手の運送業者であり、社会的要請に応じて飲酒運転を阻止する責務があるとされました。

次に、日本通運事件(東京地判平29.10.23)では、従業員自身がドライバーではなかったにもかかわらず、飲酒運転を原則として解雇事由とする企業の方針が適切であると認められました。さらに、従業員の行為が実名で新聞報道されるなど、その社会的影響も考慮された上で、懲戒解雇が有効であるとされました。ただし、従業員が長年にわたり真面目に勤務してきたことや、会社自身が実名で報道されていない事情も考慮されました。

各裁判例は、企業が従業員の就業時間外の行為に対してどのように対応すべきか、特に企業の社会的責任と評価が関係する場合に、重要な指針を提供しています

退職金没収は当然に可能か?

前述の2つ目の裁判例において、懲戒解雇に伴う退職金の全額不支給についても言及しています。具体的には、従業員の酒気帯び運転行為が、その人の過去の勤務功労を完全に無効化するものではないと判示しました。その結果、退職金の減額は妥当であるとされ、その減額の程度は50%とされています。

この判断から、懲戒解雇が有効であっても、退職金を全額不支給にすることは、勤続功労を完全に否定する要件を満たすことが難しいと考えるのが基本となります。

実務上は、懲戒解雇と退職金の不支給のどちらを優先するかを慎重に検討する必要があります。実務的には、退職金の全額放棄を懲戒解雇事由の条件として、退職届の提出を勧奨することも一つのアプローチとして考えられます。

この場合、退職勧奨自体が詐欺や錯誤に基づくものではなく、従業員が懲戒解雇を回避するメリットと引き換えに退職金を放棄することは、その従業員の自由な意思決定に基づくものとして合理的な理由があると判断されます。したがって、このような退職および退職金放棄の意思表示は有効と考えられるのです。

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