頭を抱える社員の私生活トラブルとは
会社が困る社員の私生活上のトラブルと言えば、例えば、『多額の借金を抱えている』、『女性問題がある』等が考えられます。
これらの原因が、会社の社会的信用や企業秩序に影響があるとすれば、懲戒処分や改善指導などの理由になりますが、業務の関連性を結びつける事が、実際には結構難しいです。
また、社員のプライベート行為に介入することは、プライバシーの侵害にもなりかねませんから、基本的には私生活上のトラブルだけで、解雇など厳しい判断を行うことは難しいものです。これが前提となります。
『多額の借金を抱えている』場合は?
多重債務の場合は本人は精神的プレッシャーは感じているかもしれませんが、表面上は仕事に影響していませんので会社がアクションを起こすのは困難で、指導のしようがありません。
必要以上に借金を抱えた本人が悪いとはいえ、様々な事情があるはずです。本人が申告してきたり、裁判所などから差し押さえ通知が来て顕在化した場合には、本人に事情を聴いた上で弁護士を紹介してあげたりして債務解消の手伝いをするというのも一つです。
ただし、経理等の金銭を取り扱う担当者であれば、基本は配置転換などで対応します。いくら信用している社員とはいえリスクが高すぎますし、何かあれば経営側の責任でもあります。
やはり弁護士をなどを紹介して、私的な問題を解決した後に会社と話し合いで解決する方向性が正しい対応と考えます。
『不倫』などの女性問題が発覚した場合は?
私生活上の問題ですので、原則として解雇あるいは懲戒処分は困難です。
ただし、取引先関係者等との不倫問題であれば、結果として得意先の信頼を失うことにつながりかねませんので、懲戒処分(雇用継続を前提としたもの)は、可能です。
不倫は、セクハラとは異なり、「女性が好意を持っている点(あるいは持っていた)」に違いがあります。あくまで私人間の問題ですので、会社が介入して、解雇あるいは懲戒処分を行うということはできないというのが、今の裁判所の考え方です。
しかし、不倫相手が取引先の関係者などで、会社の信用問題に発展する可能性があれば、少し話が変わってきます。特に「お得意様」であれば、契約を失った際の影響は大きいですから、普通解雇あるいは懲戒処分が可能と言えると考えられます。(ただ配置転換できる余裕があれば、配置転換で対応するのがベターです)
一方、社内間の問題の場合、確かに影響がないわけではありませんが、客観的に見て懲戒規定等に違反するとは言えない場合が多く、解雇や懲戒処分はなかなか難しいでしょう。
したがって、配置転換をして問題を解決することになりますが、もし不倫関係が「男性の上司」と「部下の女性」間であれば、可能な限り『男性の上司の方』を配置転換すべきです。
部下の女性を配置転換した場合、そのポジションに不満があれば、「あれは不倫ではありません!セクハラです!なぜ、被害者の私が配置転換させられるのでしょうか?」と言って、セクハラ問題に発展する可能性があるためです。事実は当事者にしか分かりませんからね。
会社の規模や事情によって配置転換する余裕がない場合は、退職勧奨を前提とした普通解雇もやむを得ない場合もあるかと思いますので、社内への影響、会社の方針を考慮しながら、慎重に対応しましょう。