健康診断の結果、『要再検査』、「要精密検査」などの結果が出ると、その社員には、何らかの病気、あるいは今後病気になる恐れがあるわけですが、このように社員に何らかの異常があると知りながら、通常通りに勤務させ、結果として重篤な病気に罹患したり、亡くなったりすれば、会社は「社員の健康維持に注意しなければならない義務を怠った」として、会社責任を問われる可能性を秘めています。
社員への健康診断の実施は、1年に1回行う義務があります。(労働安全衛生法66条)多くの会社で、会社が主体者となって、健康診断の実施が行われているものですが、健康診断の結果、必ずといってよいほど、「要再検査」あるいは「要精密検査」などの結果をもらってしまう社員が存在すると思います。
この場合、通常の健康診断と異なり、再検査の実施を行わなくとも、会社が労働安全衛生法等に違反することではなく、罰則もありません。
しかしながら、社員に何らかの異常があると知りながら、今までと変わらない通常どおりに勤務させ、その結果、重篤な病気に罹患したり、亡くなったりすれば、会社は安全配慮義務違反を問われ、損害賠償を請求される可能性が十分にあります。
したがって、会社は安全配慮義務違反に問われないよう、再検査を業務よりも優先させて受けさせる必要があります。
ただし、再検査には強制力はなく、社員が受診を拒否した場合でも、懲戒処分などの対応はできないと考えられています。健康状態に問題があるのに、受診をしない場合は、通常通りの業務ができないことを理由として、「労務提供を拒否」する対応を取ることになりますね。