契約解消場面で、肝心な能力不足を追及しにくくなる。
本人に配慮しすぎたり評価者に危機感がないと、問題社員候補と判断している社員の人事考課において平均あるいはそれ以上の評価をしている場合があります。
ここで問題になるのが、会社が当該社員と近い将来「雇用契約の解消」を考えている場合です。客観的に見れば、それなりの能力や社員として適格性があると会社が判断していると見られますから、少なくとも能力に関するものは、言及しにくくなります。
したがって、問題行為や会社の指導改善したというプロセスが本来は解雇の有効性を高めるものであったのにもかかわらず、それらがある程度リセットされてしまうリスクがあるということになります。
本人も戸惑い、感情的になりトラブルリスクも増える。
また感情面で見ても、本人も「会社に認められている」と思うはずで、それが、数か月後に「能力不足です」と言われれば、天から地に落ちたような気持ちになって、その怒りが会社に向かう可能性もあるでしょう。そのような経験はありませんが、私であれば、調子に乗っていた自分が情けなくなって、そう思ってしまうかもしれません。
このようなリスクを踏まえ、人事考課で会社の意思を反映しない必要性と天秤に掛けて経営上の判断をすることになりますが、近い将来に雇用契約の解消を検討しているのであれば、人事考課にそれが反映されていないのはやはり矛盾したものでありリスクといえます。社内の事情はあれど、特に「能力」という点においては、会社はそれなりに優秀だと暗に認めたというプロセスとなり、雇用解消等のトラブルになった際には、やはり会社にとって不利な材料となるでしょう。