応じることで早期解決できる。
社員はいつでも労働組合を結成、あるいは外部の組合に加入することができます。そして加入すると「労働組合加入通知書(あるいは結成通知書)」と併せて『団体交渉申入書』が、会社に送られてきます。
団体交渉申入書には、開催日時、開催場所、交渉内容などが一方的に記載されておりますが、そもそも部外者である合同労組の団体交渉に応じないといけないものなのでしょうか。
このようなご相談をいただいた場合は『基本的に受けた方がメリットがある』とアドバイスしています。その理由は、労働組合法上の義務と言えば、その通りなのですが、それ以上に「団体交渉を受けて、説明責任を果たして話し合いによる解決を目指す方が、会社にとってのリスクとコストが軽減する」というのが理由です。
団体交渉を正当な理由なく拒否した場合、必ず『不当労働行為だ!労働委員会に申し立てる!』と言ってきます。労働組合にもメンツがありますから、会社に無視されてそれで終わり、というわけにはいきません。労働委員会に申し立てる場合もあれば、裁判所まで連れて行かれる場合も少なからずですが存在します。その間も組合活動の一環として、街宣車による抗議活動やビラまき活動も行われる可能性も十分にあります。このような紆余曲折を経て、最終的に団体交渉に応じなければならないのであれば、最初から応じてしまって、どのような要求か聞き、そして誠実に答え、解決を目指すという方向性が、会社のモラルとも言えますし最終的には会社を守ることになります。
しかし、だからといって全て団体交渉申入書の内容通りに団体交渉を開催する必要性まではありません。
当然、日程の調整も可能ですし、例えば、予定されていた人数よりも多人数で、いわゆる大衆団交を行ったり、突然会社に訪問して団体交渉を求められたり、長時間に渡って団体交渉を強要する場合などは、団体交渉を拒否したり、団体交渉中に、席を立って退席することが必要な場面もあります。団体交渉申入書が来たら、これに回答を行うことになりますが、意識しなければならないのは、一回目の団体交渉設定が特に重要である点です。一回目の団体交渉で設定したものを、後で二回目以降に変更しようとすると、『慣習化されたものだから変更は許されない』と主張されることが往々にしてあります。
初めに『団体交渉ルール』を明確にしておく。
例えば、団体交渉の場所です。一旦、会社内や組合事務所で、団体交渉を行ってしまうとその後も「ずっと同じ場所で開催しろ」と言ってくる場合があります。団代交渉の時間帯についても、一旦「就業時間である日中」などに行ってしまうと、その後に時間を変更することは容易ではありません。
たった一回の団体交渉で慣習化されるなんてとんでもないとは思いますが、交渉の入り口で余計な火種を生まないように初めの団体交渉の設定は、特に慎重に行う必要があります。団体交渉で行う交渉事項についても、事前に詰めておく必要があります。
団体交渉申入書には、要求事項あるいは協議事項が書かれており、要求事項が多く、過剰な内容になっていることがほとんどです。そのまま団体交渉に臨むと、交渉が長時間に渡る上、重要な交渉事項まで行きつかない可能性がありますから、事前に回答できるものは、書面で回答し、争点を絞りましょう。
時間的な余裕を確保することも重要です。団体交渉申入書で要求された日程が、翌日であったりする場合もあり、これでは組合に対してまともな回答をすることもできません。まず回答書送付の前に簡易な書面で回答書及び団体交渉までの時間的猶予を申し入れて、社内で検討するための時間を作りましょう。
「団体交渉権」とは?
団体交渉権については、憲法28条に規定されており労働者が団結をすれば会社と団体交渉を行える権限を保障しています。団体交渉権は、会社が団結してそれぞれの労働条件につき、団結された労働組合を通じて会社と交渉する権利であり、団体交渉権は労働組合に帰属しています。また団体交渉権が認められるのは、労働者の団体であれば足り、必ずしも労働組合法上の労働組合である必要はなく組織として統一性があれば団体交渉権を有することになります。会社としては、これを理由に団体交渉を拒否することはできないということになります。しかし、「~分会」といったように労働組合の下部組織に過ぎず、独自の決定権限を有していない場合は交渉権限を正式に委譲されていない限り団体交渉権は認められないことになっています。