交渉相手である合同労組(ユニオン)のホームページの確認。
最近は、多くの合同労組(ユニオン)が、ホームページを設置しており組合員勧誘の手段にもなっています。ホームページを見ると組合活動の様子や組合の活動方針、組合幹部の著書の有無などが確認でき合同労組(ユニオン)の傾向が見えてきます。このような傾向を掴むことは、交渉過程で重要な判断要素になることがありますのでまずはこれがスタートです。
個別紛争か?集団紛争か?
団体交渉の申入書と併せて、題名が『労働組合加入通知書』という書面が送られてきます。この通知書の冒頭付近に、「御社社員Aが、当労働組合に加入したことを通知致します。」となっていれば、1名の社員が、単独で合同労組に加入したということがわかります。この場合、実質的には、加入した社員個人との『個別労使紛争』ということになりますので比較的早期の解決を目指すことも可能です。
書面の題名が、『労働組合結成通知書』となっていて、「当社内において、労働組合が結成されました。」などと書かれており、組合名が、合同労組の組合名の後に「(会社名)分会」などとなっている場合があります。これは、一人ではなく、合同労組の指導の下、多人数が労働組合を結成した可能性が高いと言えます。この場合は『集団的労使紛争』となりますから、長期戦の可能性を覚悟する必要があります。
誠実に交渉や検討する必要はあるが、要求の全てに応じる必要はない。
労働組合結成通知書には『すでにご理解いただいているかと存じますが、以下のような行為を会社が行うことは、憲法、労働組合法などにより禁止されており、直ちに不当労働行為となりますので、ご注意ください。』などと注意書きが書いてありますが、必要以上に過敏反応する必要はありません。誠実に対応すれば良いだけのことです。このような内容はどの会社にも同じように送っていると思われますし、そもそも不当労働行為かどうか判断するのは合同労組ではなく、労働委員会や裁判所です。
禁止事項の中に『不誠実な態度や不誠実な回答』と書いてあって、「組合の要求を受け入れないと大変なことになるのではないか」と考える経営者様もいらっしゃいます。しかし、団体交渉に応じ、解決に向けて説明義務を果たすことは必要ですが、必ず全ての要求を呑まなければならない義務まではありません。要求事項を一つ一つ精査した上で、対応対策方法を検討しましょう。そして、合同労組に対して、回答を行うことになりますが、団体交渉の前に、「団体交渉のルールの設定』と『交渉事項の絞り込み』が重要になります。
回答書の作成内容が重要
準備は重要ですが、組合へ連絡をいつまでもしないでおくわけにもいきません。その後、組合の対応は厳しくなるだけですし団体交渉拒否で不当労働行為であると言われかねません。
労働組合対応を検討する時間を確保しましょう。団交拒否と言われないために簡単な回答書を作成します。内容としては要求書及び団体交渉申入書を受領したこと、担当者の名前、日時や開催場所、要求に対する回答は、検討の上で後日に回答する旨です。これらの内容を書面にして、FAX及び配達証明等で、当該合同労組へ送付することになります。
事前に団体交渉事項を整理しておく。
労働組合との団体交渉を誠実に行うために事前に『団体交渉事項を具体的かつ明確にしておく』必要があります。
団体交渉の場において、事前に決めておいた交渉事項「以外」の要求を突然してくることがあり、これではいくらでも交渉事項は増え続け、結局は、必要のない事項まで約束させられてしまう恐れがあるからです。事前の団体交渉開催の回答書において、交渉事項を具体的に確定しておき会社も交渉する事項、これに対する回答をよく検討し決めておきましょう。
このように書面にしておいても団体交渉になって突然、新たな要求事項を言ってくることもあります。この場合は、改めて文書によって、要求事項として出すことを求めましょう。新たな要求事項に対しては、会社に帰ってよく検討し後日に誠意を持って回答すれば問題ありません。
要求事項内容についても注意が必要です。労働条件・待遇の基礎となるものは団体交渉事項に当たりますが一方、個別の組合員の昇進、昇格に関する事項はもとより経営状況や決算書などの公開まで求めてくる場合があります。
会社の専権事項については直ちに団体交渉事項になるものではありません。本当に組合員の労働条件に関わるものか、団体交渉で答えなければならないものなのか、よく精査した上で回答する必要があります。
団交申入書を直接会社へ持ってきた場合は?
合同労組と初回の団体交渉を開催していない場合や面識がない場合、労働組合の担当者が突然、会社へ団交申入書や要求書を持って訪問する場合があります。口頭だと、法律があっての交渉であるのに正確性を欠き、双方が歪曲ないし誤解して事が進む可能性が高いです。
なので、この場合は申入書を受け取るだけに留めるべきで、そこで話をすれば有らぬ約束を求められ、デメリットがあってもメリットはありません。不用意な発言は、後々に揚げ足を取られる可能性もあります。要求等は受け取るとしても要求内容等を検討して、後日の回答書にて回答を行えば十分です。