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団体交渉の進め方①『会社は労働組合の要求を聞いて答える立場であること』を忘れない

特定社会保険労務士 脇 淳一回答書のやりとりが一通り済んだら初回の団体交渉に臨むことになりますが、団体交渉を経験したことがない場合には団体交渉の進め方が分からず不安に思うのも当然だと思います。

団体交渉は怒号が飛び交う団体交渉もあれば、事前に準備してあったカンニングペーパーを淡々と読みあうような団体交渉もあり、合同労組の担当者によってその様相は随分と異なります。いずれにしても、事前に想定される要求事項に対する回答内容は、よく整理してまとめておきましょう。

そして団体交渉は「労働組合が会社に開催を求めて行うもの」です。にもかかわらず、冒頭から組合側が、しばらく何もしゃべらない場合や積極的でない場合が意外と多く存在します。沈黙が続くとこちらが何かしゃべらなくてはいけないように思ってしまいますが、会社から積極的に話をしても本来の団体交渉とは異なるものだと思います。営業が上手な口達者な方もここは我慢です。

要求事項について回答を求められれば事前に準備しておいた回答を行いますが、もちろん準備していない内容も色々聞かれると思いますので、基本的には聞かれた事については会社の主張をはっきりと説明します。もし事前に書面で詰めた内容と全く関係ない内容であれば、その場で安易に回答せず、改めて回答する義務があるかどうかを検討した上で対応します。

関連することでも即答できないものであれば、時間的な猶予をもらって後日に書面にて回答するか次回の団体交渉で回答すれば問題ありません。また、議論が白熱してきたら適宜に休憩を提案してもよいでしょう。

団体交渉の進め方②「誠実対応は忘れずとも相手の発言に必要以上に反応しない」

労働組合が団体交渉を申し込むことは、労働組合法上の権利ですが、だからと言って、労働組合が団体交渉において、何をやっても許されるというわけではありません。中には1のことを10くらいに膨らませて要求してくるスタイルの合同労組もあります。そして、不当労働行為だと主張されることになります。

そもそも、不当労働行為かどうか判断するのは、労働組合や合同労組ではなく、「労働委員会」あるいは「裁判所」です。団体交渉に必要以上の多人数で押しかけて、組合員が不規則に発言する『大衆団交』も、一斉に発言されたら、収拾がつかなくなり、正当な団体交渉とは言えません。警告の上で、途中退席しても構わない場合もあります。

また、組合員が暴行、脅迫、監禁等の行動があった場合には、会社はその場で団体交渉を打ち切ることも許されます。もちろん、不当労働行為を判断されてしまうような発言等は行わないことは当たり前ですが、他方でこのような行き過ぎた行為は断じて許されませんから毅然とした姿勢で臨み、暴力的行動を行わないと約束しない限り、団体交渉に応じないことを主張し、あまりにも暴力行為が酷い場合には刑事告訴も辞さない構えで対応しましょう。

団体交渉の進め方③「曖昧な回答はしない」

会社は団体交渉において、冷静になり、はっきり「YESなのかNOなのか」をはっきり答え、会社の主張とその理由を説明すればよく、曖昧な回答をすることが最も危険です。

しかし、そうはいっても不安な場合もあると思いますので、その場合は、弁護士や社会保険労務士に同席してもらい、団体交渉の最中でも堂々と相談しながら回答しても何ら問題ありません。会社にいつでも連絡を取って対応できる体制を取っておけば心理的にも安心できると思います。

注意をしていただきたいのは、最終局面の合意書を除き、団体交渉において安易に書面へのサインをしないことです。形式はどんな形であれ、書面にサインをした時点で、その書面は『労働協約』である主張される可能性が高いです。

その上で、回答や判断に迷うことがあれば持ち帰って後日回答すれば問題ありません。団体交渉でもその旨を回答すれば、全てその場で回答できないことを以て、不誠実交渉とはなりませんので安心してください。

※ 『労働協約』とは

労働協約とは、労働組合と会社の合意事項であり、この合意事項を書面にして、両当事者が署名または記名押印したもののことを言います。労働協約を締結すると、就業規則や雇用契約書と矛盾する内容があったとしても、労働協約が優先されることになります。したがって、会社としては、労働協約の締結について、非常に慎重に対応しなければならないことになります。

労働協約の効力を生じさせるためには書面化して、両当事者が署名または記名押印する必要がありますがその形式にはとらわれず、例えばレシートの裏のメモ書きようなものであったとしても、両当事者が署名したことが分かればそれが労働協約となります。団体交渉の議事録について、会社が署名を求められ、あまり深く考えずに署名等を行ってしまって、これが労働協約として主張される場合があります。労働協約を締結する際には、その内容についてリスクをよく理解しておく必要があります。

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