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特定社会保険労務士 脇 淳一

貴社では割増賃金、つまり残業代を○○手当にて毎月一定額固定払いをし、実際の割増賃金との差額が発生した場合にその差額を追加支給するという賃金形態を一部の方へ採用されております。この○○手当においては、時間外労働だけではなく休日労働及び深夜労働に対する賃金も含有されることが各種契約書及び規程に規定され、各社員様と合意の上で運用がなされております。

ご相談の内容では、

  • ① 深夜労働に対する割増賃金の固定的支給が可能かどうかという点
  • ② 固定払いにしている割増賃金に、時間外労働と休日労働など、異なる支給対償も含まれる中で深夜労働に対する割増賃金も含むことができるか

という点が焦点になろうかと思います。

まず①については、行政通達において

したがって,本条により労働時間等の適用除外を受ける者であっても,第37条に定める時間帯に労働させる場合は,深夜業の割増賃金を支払わなければならない。ただし,労働協約,就業規則その他によって深夜業の割増賃金を含めて所定賃金が定められていることが明らかな場合には別に深夜業の割増賃金を支払う必要はない

(昭和63年3月14日 基発150号,婦発47号)(平成11年3月31日 基発168号)

と明確に示しており、深夜労働に対する割増賃金の固定払いを認めており、何ら問題はないと解釈できます。

そして②についてですが、各種割増賃金が混合することに関する判例及び裁判例は存在せず、また混合することが違法と解釈される法規定が一切存在しておりません。敢えて申し上げると、ファニメディック事件(東京地判平成25年7月23日判決)において「確かに、本件固定残業代規定に従って計算することで、通常賃金部分と割増賃金部分の区別自体は可能である。しかし、同規定を前提としても、75時間という時間外労働手当額が2割5分増しの通常時間外労働の割増賃金を対象とするのか、3割5分増しの休日労働の割増を含むのか判然とせず、契約書や給与明細書にも内訳は全く記載されていない」と判示して無効としています。この裁判例では、固定残業代の可否そのものが問われており論点が異なりますが、「3割5分増しの休日労働の割増を含むのか判然とせず」とあり、判然とすれば対象となるとも解釈できます。

当所としては、時間外労働、休日労働及び深夜労働を各々明示しなければならないという法規定や、各々の明示がなければ割増賃金の固定払いを否定される裁判例が存在しないことから現状の規定及び契約書内容において割増賃金の固定払いが否定されたり、深夜労働に対する賃金未払いと判断される可能性はないと考えております。

つきましては、現行の制度設計等に法的問題が生じないものであると考えており、設計変更の必要性はないという結論を当所の回答とさせていただきます。

※ この回答は顧問先様のご相談と当所の回答内容を脚色して、公開しているものです。顧問先様の前提を把握した上での回答ですので、どの企業様にも当てはまるものではないことをご了承ください。

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