会社は「採用の自由」と「調査の自由」を有しているが
会社は原則として、社員を採用するかどうかという『採用の自由』と、応募者がどんな人間かを調査する『調査の自由』を有しています。
一方で職業安定法5条では、会社は応募者の個人情報について、業務の達成に必要な範囲内で収集し、その収集の目的の範囲内で保管、使用しなければならないことを規定しています。したがって、会社の聞きたいことを聞いたり、いろいろと下調べしたりするのは業務の必要の範囲内ということになります。
しかし、「業務の必要の範囲内」といっても、非常に曖昧ですし、それ以外にも聞いておきたいこともあると思います。質問する前に「答えたくないことは答えなくていい」と伝えた上で、質問をしましょう。
一見、業務と関係のない事項でも、職業安定法において、「本人の同意がある場合その他適正な事由がある場合は、この限りでない」とありますので、本人の同意の上で、情報を収集するのであれば、法令違反とはなりません。ただしあまりに常識外れな質問はクレームになりますので、必要に応じて行いましょう。
採用の判断も原則自由にできる
会社は、「採用の自由」として、以下が認められています。
- 何人の採用をするか
- どのように募集をするか
- どんな人を、どんな基準で募集をするか
- 実際に採用をするか
- どんな人物か、調査をする
このうち、何点か注意する点があります。
「どのように募集をするか」については、自社で行う場合には、自由に行うことができますが、募集を委託する場合のみ、委託先が厚生労働大臣の許可を受けている必要があります。(職業安定法36条)
「どんな基準で採用するか」については、労働組合の加入の有無、性別を理由に、採用決定の基準とすることはできません。
事前の人物調査について、応募者の人格やプライバシー侵害になるような調査は、事案によっては不法行為で、損害賠償の対象となります。また、身元調査も、大阪府、熊本県、福岡県等では、条例で禁止されているので、この地域以外でも、行うべきではありません。
以上の点に注意すれば、採用は基本的には自由であり、会社の決定で行えるものです。