賃金規程に事前に支給する確約がなされていなければ原則として、支給する必要はない。
賞与の支給は、当然ながらお互いの約束や会社の判断によって、支給が行われるものです。
就業規則や賃金規程に『賞与を支給する』と規定して、初めて支払い義務が発生するものです。よって、賞与をどのような条件で支払うかは、会社が決定できるものになっています。
そして、多くの会社で「賞与は支給日に在籍している者に対して支給する」と規定していると思われます。このような規定があれば、賞与の支給日前に退職予定の場合、『賞与の支払い義務はない』ということになります。
このような支給日在籍要件がなく、賞与の算定対象期間のみ規定されており、対象期間中は在籍していたが、支給日前には退職が予定されている場合は、過去の慣習によって判断されるものと考えられます。同様のケースで支払ったことがない場合は、支給しなくても問題はないものと考えられます。
裁判例も、マナック事件(広島高裁平成5月23日判決)において「~原告はこの査定によって初めて具体的賞与請求権を取得したものというべきである~」と、具体的に支給を行った場合、あるいは支給査定が完了し本人へ通知などがされ支給が確約された場合に、対象労働者に請求が発生すると判示しています。
したがって、就業規則及び賃金規程において、過去に賞与査定期間や方法が明示されている場合を除き、支給日在籍の要件があれば支給を行う必要はありません。一方、賞与査定期間や方法が明示され、期間や査定が終了している場合は請求権は発生し、また、支給日在籍要件がなく、賞与の算定期間において在籍している場合は、過去の慣例によるものと考えられます。
賞与の支給日在籍要件がないと互いに余計な混乱を招くだけですから、しっかり就業規則及び賃金規程に規定して周知徹底が必要です。