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実際にあった話です。

  • 月給32万円
  • 月20日程度の出勤
  • 始業9時、終業18時まででの1日8時間労働

という営業社員Aさんがいました。入社は、ちょうど2年前です。

Aさんには、採用面接時に「残業代は出ないよ」と伝えて、当時は本人も「わかりました。私自身、営業は初めてなので、当然ですよ。」と述べて、これを確認していました。普段のAさんは・・・

  • 9時に会社に出勤し、10時頃から外回り営業のため、外出していた。
  • 会社に戻るのは、おおよそ18時頃だった。
  • 退社時間する時刻は、事務作業等で21時すぎ頃だった。
  • このようなサイクルが、入社から2年間続いた。

特定社会保険労務士 脇 淳一労働基準法では、8時間を超えた労働時間は、法定外残業なので、“18時から21時まで、おおよそ3時間残業している”ことが伺えましたが、会社は、残業代は支給しないことは事前に確認しているので、特に気を留めていませんでした。

ある日、Aさんが突然「退職したい」と社長へ申し出てきました。仕事ぶりに何ら問題はなく、不満があるような素振りもなかったので社長は後ろ髪を引かれるような思いで退職を了承したとのことでした。しかし、問題はここからでした。

退職した10日後に、Aさんから社長宛てに「残業代の請求書」が、内容証明郵便で届いたのです。Aさんの請求金額は、「720万円」でした。これは営業社員Aさん一人当たりの金額です。金額の理由もそれなりに根拠があるもので、専門家から見ても相当勉強していて経験者であるような印象を受けました。なぜこんなにも多額になってしまうのでしょうか?そして、面接で約束した「残業代は、出ないよ」といった約束は、どうなってしまうのでしょうか?

『残業代はでないよ』という約束は無効になる。

労働基準法では、「一日8時間、週40時間を超えて労働させてはならない」(労働基準法32条)とあり、さらに「この法律で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については無効」(労働基準法13条)と規定しています。トラブルになると『労働基準法』という法律が出てきてこの法律を下回るような合意内容は、この労働基準法に基準に引き上げられて修正されることになります。

「1日8時間を超えて働かせるような酷な約束してはダメ!もし、1日8時間を超えることを納得し合ったとしてもダメ!8時間で修正します!守らなかったら、会社に罰則も課しますよ!」と国はいっているのです。このように、互いの納得した合意内容を、揉めたら帳消しにするという法律は、日本の2000近くある法律のうちでも、あまり例を見ません。

会社の「残業代は出せないよ?」に対し、社員が「いいよ!」という約束は意味をなさず、残業代請求に応じる必要があるということになります。

  • 月給32万円
  • 月20日程度の出勤
  • 始業9時、終業18時まででの1日8時間労働

という営業社員Aさんは、入社は2年前で、残業代は営業職という理由で支払っていません。

もし、この社員Aさんが反旗をひるがえし、残業代を請求すれば、会社は非常に不利な交渉を強いられます。少し理論武装をしたAさんは、次の計算方式で残業代を請求してきます。

残業代の計算方法は?

営業社員Aさんの残業代計算方法は・・・

  • 時給ベース換算・・・月給32万円÷160時間=2,000円
  • 残業時間の時給・・・時給2,000円×125%(残業割増)=2,500円
  • 1日の残業代・・・・・2,500円×3時間=7,500円
  • 1ヶ月の残業代・・・・7,500円×20日=15万円

この請求金額に対して、会社は「ロスタイムがある!」とか「いくらかは支払い済みだ!」などと主張して、金額を落としていく交渉が繰り広げられます。

ただ、サービス残業をさせていることが事実であれば、大きく減額させることはできません。このように会社は『戦う前から圧倒的に不利』なのです。そのため日頃の対応であったり、交渉力が問われることになります。

残業代請求の時効は?付加金とは?

残業代請求の時効は、通常見解だと「2年間」です。(令和元年7月時点)(不法行為による時効主張で3年と主張される場合もあります)先の例では1ヶ月の残業代15万円×2年間=「360万円」が請求される残業代となります。

しかしながら、場合によっては、これだけでは済まない場合があります。それは「付加金」の存在です。これは、もし裁判所の判決をもらった場合、その裁判官の判断により、最大2倍まで会社に支払わせるというものです。

外部の専門家などが付くと、裁判にもなっていないのに、この「付加金」までを請求されることがありますね。この付加金を合わせると、最大720万円。これが残業代請求金額の根拠です。相手も最初のハードルが高い方が、最終的な金額を大きくなると当然考えていますから、最初から付加金を合わせて請求するのが実務です。

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