事業所内において作業準備を義務付けられている、あるいは事業場内でないと準備自体が困難な場合には、労働時間となります。
仕事を開始する前に、事前に準備をしないと仕事自体ができないという業種が多く存在し、例えば、接客業における制服着用、工場現場における作業着の着用義務付けなど、労働時間の開始前に準備が整っているというのが、一般的だと思われます。
この時に問題となるのが、これらの作業するための準備時間は、労働時間となるのかという点です。
労働時間は、「労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間」とされています。(三菱重工長崎造船所事件)そして、ここでいう指揮命令下に置かれている時間というのは、黙示的に指示されたものも含まれ、前記の裁判例においては、「準備行為等が事業所内において行うことを使用者が義務付けられ、または余儀なくされたときは、当該行為を所定労働時間外において行うものとされている場合であっても、当該行為は、特段の事情がない限り、使用者の指揮命令に置かれたものと評価することができる」と述べています。
したがって、ポイントは『会社内において、準備行為を義務付けているかどうか』ということになります。
仮に、自宅で制服を着用する等、準備行為自体可能であって、特に会社内で準備することを指示していない限りは、たとえ会社内で準備を行っていたとしても、労働時間とはなり得ないということになります。したがって、このような場合は残業代あるいは割増賃金等の支払いは必要ないということになります。
しかし、工場における安全具等の着用時間は、たとえ明確に指示がなかったとしても、安全を確保をする上で、必要不可欠なものですからこれは労働時間と判断される可能性も十分にあると思います。ケースバイケースによって対応することになります。