昭和の時代には、労働が中心であり、残業代を請求する文化や情報が希薄でした。しかし、現代は情報化社会となり、パソコンを通じてさまざまな労働者の権利に関する情報が手に入れやすくなっています。サービス残業や未払い賃金に関する情報は、インターネット上に詳細に記載されており、労働者のサポートをする団体や専門家の存在も増えています。従業員は、必要に応じてこれらの専門家に助けを求めることもできるようになっています。
もし、社員が「会社に残業代を請求したい」と思った場合、専門的な事で不安も多く、「どこかに相談したい」、「一緒に戦ってほしい」と考える人も多くいますし、自然な流れとも言えます。とすると、その後の多くは、次の主に3つの機関に相談することになります。
未払い賃金、残業代の請求を考える際、多くの不安や疑問が浮かび上がることが一般的です。そんな時、主な相談先として考えられるのは以下の3つです。
- 1. 労働基準監督署への相談
- 2. 弁護士による訴訟・交渉の代理人依頼
- 3. 合同労組などの労働組合への加入
これらの機関や専門家への相談には、それぞれ特有の事情や特徴があります。
社員が残業代を請求する場面で、その際に選択する相談先や行動にはさまざまな違いがあります。以下、3つの典型的なパターンが以下になります。
1. 労働基準監督署への申告の場合
- 労働基準監督署が調査に訪れる場面には、定期監督と申告監督の2種類がある。
- 申告監督の際、申告者は退職者である可能性が高い。
- 申告による残業代の請求額と会社の認識額に差異がある場合、中間の額で和解を検討することが推奨される。
- 申告者が認識できれば、その申告者らと早期に和解の交渉を求めることで、経営者の時間や精神的負担、さまざまなコストも節約できる。
2. 弁護士に交渉依頼
- 近年、残業代請求に関する弁護士業界のビジネスが増加している。
- 弁護士に相談するハードルは高いが、成功報酬型の事務所も増えている。
- 弁護士が関与すると、労働審判や訴訟などの法的手段が容易に取られることがある。
- 「付加金」は、残業代請求の判決が出た場合、最大で判決金額と同額の追加支払いを命じられるリスク。
3. ユニオン(合同労組)からの団体交渉要求
- 合同労組は、1人からでも加入が可能な労働組合。
- 組合が団体交渉を要求する場合、交渉を拒否することは難しい。
- 団体交渉では、組合側からの要求全てに応じる義務はない。
- 合同労組の活動には、ビラまきや街宣活動などが含まれるが、これらは一定の範囲で許容されている。
- 合同労組との交渉は「労働組合法」が絡み、専門性が高い。早期に専門家の意見を求めるのが妥当。
残業代請求に関するトラブルは、企業と社員双方にとって煩雑で時間とコストを要するものです。明確に残業代を支払っていない場合、過剰な要求でなければ、話し合いの場を設けられるように、要望と交渉を行い、早期の和解を目指すことが双方にとって有益であると言えます。