就業規則の不利益変更については、労働契約法9条において「労働者の就業規則を変更することにより、労働者の不利益に労働契約の内容である労働条件を変更することはできない。」とあり、次の10条において「労働者の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性、~(中略)~合理的なもの」でない限り、その変更は許されないとしていますので、これが理屈の世界の原則です。
しかし、現実として不利益変更に関するトラブルが多発しているかというと、あまりそうは感じないですね。
例えば、社員を一方的に解雇してトラブルになるケースと、賃金を一方的に切り下げてトラブルになるケースを比べれば、解雇してトラブルになるケースの方が圧倒的に多いはずです。実務では、賃金を切り下げる場合の方が多いにもかかわらずです。
やはり、解雇は社員としての権利を根こそぎ奪う一方で、賃金の切り下げは、あくまで比較論ですが、社員の生活への影響は解雇ほどに厳しいものではありません。
そして、社員にとっても、会社と戦うということは精神的にも経済的にもかなり負担が大きいですから、冷静に考えて、これを天秤にかけて判断するのが一般的です。賃金の下げ幅にもよりますが、実際に会社と戦おうとする人は、現実問題として、やはり少ないと言えます。
しかし、だからといって、当然やりたい放題やってよいわけでないことは前述の通りです。社員の信頼関係を維持するためにも、経営上、必要に迫られた場合の最終手段として考え、各社員の理解を得ようとするプロセスは絶対的に必要です。
今ある経営の危機を乗り越えた時には、社員に還元を約束するぐらいの気持ちでやらないと、理解も得られないですし、危機を乗り越えたとしても、社員と信頼関係が崩壊しているかもしれませんからね。
賃金の切り下げ等の労働条件の中で、重要なものについては以上ですが、例えば服務規律等の会社内におけるルール等については、そもそも就業規則は会社が一方的に制定できることが前提ですので、会社が柔軟に変更することが可能だと考えられますね。