就業規則の見直しのポイントとして、常日頃から申し上げているが、「就業規則の第1条の規定がもっとも危険です」と申し上げています。
ほとんどの就業規則の第一条に「この就業規則に記載のない事項については、労働基準法その他法令の定めるところによる。」といったような規定を見かけます。
この何気ない規定は、とんでもないリスクを抱えています。
まず、労働基準法やその他の法令を遵守することがとても重要であり、守らない場合には、様々なリスクが発生します。しかしながら、労働基準法やその他の法令において、「絶対に守ってください。守らないと罰則があります」という厳しい規定がある一方、「できれば守ってね。」といったように努力義務にとどまるものあり、中には「~しなければならない。」とありながら、実は罰則が存在しないものも多くあります。
一例ですが、労働安全衛生法という、労働基準法の弟分のような法律があり、この法律の第66条の5において、「事業者は、~(健康診断の結果を受けて)~当該労働者の実情を考慮して、就業場所の変更、作業の転換、労働時間の短縮、深夜業の回数の減少等の措置を講ずるほか、~(中略)~その他の適切な措置を講じなければならない。」と規定されています。
健康診断の結果が悪い場合には、会社は労働時間を短くしたり、仕事の内容を変更したりしなければならないということです。
しかし、この規定には、罰則はありません。違反しても罰せられることもないですし、当然にこれを行う必要は、本来的にはないのです。
しかしながら、前述のような「~法令による」といったような規定があることで、必要のないものまで守ることを会社は宣言したことになり、トラブルになれば、これを根拠に過剰な要求を求められることだってあります。
もちろん、規定を削除したからといって、社員の健康管理をする必要がないというわけではなく、健康診断の結果に基づいて、それなりの配慮や対応は必要です。
しかしながら、会社の規模や経営状況などに応じて、約束できるものとできないものがあり、法律の規定通りにそのまま約束をしてしまうというのは、非常にリスキーですね。
したがって、このような規定が存在する場合は、即刻削除すべきだと考えます。